コラム 〜 ふじみんと学ぶ! お水の基礎知識
もしも海で漂流中に飲み物がなくなり、喉の渇きを潤すために海水を飲んだ場合、どうなるのかな?海水も水分の一種だから飲水として十分機能する、と思っている人も多いかもしれないね。でも、実際には海水は飲水に適しておらず、場合によっては脱水症状を強めてしまう可能性もあるんだ。
そこで今回は、海水に含まれる塩分に注目しながら、海水が飲水に適さない理由について紹介するよ!
海水はなぜ飲めないのか
海水が飲水に適さない理由は、人間の体の塩分濃度よりも海水の塩分濃度の方が高いためです。人間の体の塩分濃度はおよそ1%で、濃度を常に保つように腎臓が機能する仕組みになっています。しかし、塩分濃度がおよそ3%の海水を飲んでしまうと、腎臓の処理能力を大幅に超えてしまい、腎臓に大きな負担を掛けることになってしまいます。
また、大量の塩分を取り込んでしまうと体内の塩分濃度が高まり、体が濃度を薄めようとするため大量の水分が必要になります。喉の渇きを潤すどころか、ますます喉が渇いた状態を悪化させるため、海水は飲水には適さないといえるでしょう。
海水を飲んだらどうなる?
それでは実際に海水を飲んでしまった場合、私たちの体はどうなってしまうのでしょうか。
まず考えられるものは、脱水症状を引き起こすことです。塩分濃度の濃い海水が体内に入ると、体が余分な塩分を排出しようとします。その際には多くの水分が必要となり、蓄えていた水分を大量に使用することで体の塩分濃度を調節します。その結果、体内の水分がどんどん奪われていき、脱水症状を引き起こしてしまいます。脱水症状が進んでしまうと、死に至ることもあるため注意が必要です。
また、海水中には硫酸イオンやマグネシウムイオンが含まれており、これらの多量摂取は下痢を引き起こす危険性があります。下痢を起こした場合、ますます水分が失われていき、脱水症状の進行を促進させることになります。
さらに、大量の塩分によって腎臓は大きなダメージを受けます。程度によっては腎炎になってしまうこともあり、体の状態はどんどん悪化していくでしょう。
このように、海水を飲むと脱水症状や腎炎を引き起こす可能性が高くなります。海で漂流中などに海水を飲んでしまった場合、危険な症状を悪化させて死を早めてしまうリスクがあるということを覚えておきましょう。
海水を飲む方法
どうしても海水を飲まなければならない場合は、海水を蒸留させて塩分濃度を下げる必要があります。
海水を蒸留する際には以下の手順を踏んでください。
1.鍋に海水を入れて中央にコップを置く。
2.鍋の周囲を濡れタオルでガードして、水蒸気の漏れを防止する。
3.鍋の上に海水を入れた中華鍋をセットし、火にかける。
こうすることで鍋の中の海水から立ち上る湯気が中華鍋の鍋底で冷やされ、底をつたってコップに落ち、その繰り返しによってコップに蒸留水が溜まっていく仕組みです。海水は濁っていますが、蒸留すると真水のように透明になります。塩分濃度も十分に下がり、飲水として機能するレベルになります。このように、海水を飲む際は必ず蒸留を行ってください。
おわりに
海水は単に塩辛いから飲むのに適さないわけではなく、塩分濃度が高いために健康を害してしまう危険があることが理由だったんだね。だからどんなに水不足に苦しんでいる国や地域でも、海水をそのまま口にすることはないんだ。
人間の体は、水分と塩分のバランスが整うことによって健康を保っているため、そのバランスが崩れてしまっては健康でいられるどころか、生命を維持すること自体が難しくなるかもしれない。海水をそのまま飲むことは控えた方が良いけど、いざという時に海水を飲む場合は、必ず蒸留して塩分濃度を下げてから飲んでね!
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